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 結果を待つのは空恐ろしいことだったが、ウェストは決してたじろがなかった。ときおり死体に聴診器をあてては、思わしくない結果を達観していた。ごくわずかな生命の徴候も得られないまま、およそ四十五分がすぎると、失望もあらわに試薬が適切なものではなかったのだといったが、この機会を最大限に利用して、慄然たる戦利品を処分するまえに、処方をかえていま一度試してみる決心をつけていた。わたしたちはその日の午後に地下室に墓穴を掘っていて、夜明けまでには埋めてしまわなければならなかった――廃屋には施錠していたが、食屍鬼め港股夜期報價いた行為が発見される危険は、ごくわずかなものでも避けたかったからである。それに翌日の夜ともなれば、死体はいくら何でも新鮮なものではなくなってしまう。したがってわたしたちは一つきりのアセチレン・ランプを隣の実験室にもっていき、物いわぬ客を闇のなかの台の上に残して、新しい試薬の調合に全精力をかたむけ、ウェストの指示のもと、ほとんど熱狂的な綿密さで計量をつづけた。
 あの悍《おぞ》ましい出来事は、まったくだしぬけの思いがけないものだった。わたしが一本の試験管から別の試験管に何かを注ぐかたわら、ウェストが、ガスのひかれていないこの建物で、ブンゼン・バーナーにかわるアルコール使用の小型発炎装置をまえにせわしく作業していたときのことだが、わたしたちが立ち去った闇につつまれる部屋から、いまだかつて聞いたこともない悪魔めいた身の毛もよだつ悲鳴が連続してほとばしったのだ。地獄そのものが開いて亡者たちの苦悶《くもん》が解き放たれたとしても、この混沌《こんとん》とした呪わしい音声ほど名状しがたいものではありえないだろう。間断なくつづく信じられない不快な音声のうちに、生命あるものの至高の恐怖と尋常ならざる絶望とがことごとく凝集していたからだ。人間であるはずはなく――人間にこんな音声が発せられるわけがない――ウェストとわたしは、つい先ほどおこなった実験のことや、それによって発見をなしたかもしれないことも失念して、おびえた動物のように一番近い窓にとびつき、試験管もランプもレトルトも押し倒し、田園の夜の星のちらばる深淵に、狂おしくとびだしたのだった。よろめく足でやみくもに街にむかっているあいだ、二人とも悲鳴をあげていたように思うが、街はずれに達したときには見かけだけの平静さは保っていた――酒びたりになってようやくふらふらと家路につく、酔いどれに見える程度には。
 わたしたちは別れることなくどうにかウェストの下宿にたどりつき、ガス灯をつけたまま夜明けまで声を潜めて話しあった。夜が明ける頃には調査のための理性的な考えや計画をたてることができ、すこしは気持もおちついたので、その日は終日眠ることができた――大学の講義はかえりみなかった。しかしその日の夕方、夕刊に掲載されたまったく関係のない二つの記事のおかげで、またしても眠ることなどできなくなってしまった。チャップマン農場の古い廃屋が不可解にも燃えあがり、見わけもつかぬ灰儘《かいじん》に帰してしまったというのは、倒れたランプのせいであると理解できた。もう一つの記事は、無縁墓地の新しい墓が踏鋤《ふみすき》も使わず無闇《むやみ》に手でかいたかのように、荒らされた形跡があるというものだった。わたしたちは念入りに土を踏みかためていたから、わけがわからず途方にくれてしまった。
 そしてその後十七年間と避孕 藥いうもの、ウェりかえっては、気のせいか足音がするようだとこぼすことがよくあった。そのウェストもいまはもういない。
 
 十六年まえ、魔王イブリスの広間からとびだした有害な悪鬼たちのように、腸チフスがアーカムじゅうに蔓延《まんえん》した忌《いま》わしい夏のことは、生涯忘れることはないだろう。たいていの者はこの年を悪魔のような疫病によっておぼえているほどで、まさしく恐怖がクライスト・チャーチ墓地の墓穴に積みあげられた棺の上に、蝙蝠《こうもり》の翼のごとくたれこめていたのだが、わたしにとってはさらに大なる恐怖がある――ハー